巫女ごろし


「魔理沙~?」
 紅白の巫女姿がトレードマークの女の子――博麗霊夢は金髪白黒魔法使いの霧雨魔理沙を探していた。
 今の時間は深夜を回ったところだった。
 ちょっと前に箒で来た魔理沙は、霊夢が目を放した隙にいなくなっていた。
 そんなこんなで魔理沙が置いていった箒を片手に霊夢は魔理沙を探していたのだった。
「魔理沙~私そろそろ寝るんだから用があるなら早くしてよね~?」
 廊下を歩きながら霊夢は魔理沙を呼び続けたが一向に返事が返ってこない。
 ややあきれ始めた霊夢だが、これで寝た後に起こされては非常に辛い。
「魔理沙! いい加減返事しなさいよ!!」
 そんな事を考えているとついつい声に怒気が含まれてしまう。
 すると。
「うぃ~霊夢?」
 奥の方から甘ったるい声が聞こえた。
 声が聞こえた方に足を運び部屋の戸を開ける。
「魔理沙! あなた……って何してんの?」
 戸を開けて中にいた魔理沙を見て霊夢は首を傾げる。
 魔理沙の様子がおかしい。
「えへへへへ……霊夢だ~」
 目はとろんとしているし、服も若干はだけ気味。それに加えてろれつも回っていない。
 そして魔理沙の手には瓶が握られていた。
 一升瓶……酒だ。
 瓶に貼られているラベルには「巫女ごろし」と書かれている。
 中身は半分以下だ。
「ちょっと魔理沙!? それは神社の秘蔵酒……あぁ~楽しみに取っておいたのに……」
 隠していた秘蔵酒を半分以上飲まれて脱力する霊夢。
「うぇーれいむおちこんでる?」
 そんな霊夢を見た魔理沙がろれつの回らない声で励ます。
 元々の原因はあんたよという目で魔理沙を見る霊夢。
「それで……あなたの用件ってなんだったの?」
 脱力しながらも安眠を得るために霊夢は魔理沙に訪問の用件を聞く。
「うー。たしかはなしたいことがあったような……わすれた!」
 極上の笑顔で忘れた発言をした酔っ払い。
「…………」
 絶句。
「そう……じゃあ私はもう寝るから適当に切り上げなさいよ?」
 そういって部屋を出ようと魔理沙に後ろを向けた瞬間。
「なにおーわたしのさけがのめないってか~?」
「きゃ!?」
 突如酔っ払いと思えない機敏な動きをみせた魔理沙が霊夢の巫女服をつかみ抱き寄せた。
 そして支えきれず後ろに倒れる。
「魔理沙いいかげんに……うっ!?」
 言葉を言い切る前に口の中に何かを突っ込まれた。
 反射で口の中に入れられたものを嚥下する。
「どうだ~わたしのさけはうまいか~?」
 霊夢の口に突っ込まれた一升瓶は魔理沙の手によってどんどん霊夢に注がれていく。
 吐き出す事が出来ない霊夢は遂に一升瓶に残っていた半分の酒を一気飲みしてしまった。
「あれ~なくなっちゃった~」
 ようやく一升瓶に加わっていた力が抜け自由を取り戻す霊夢。
「げほっげほ……。魔理沙あんたね……」
 「巫女ごろし」の半分を一気飲みしても酔わない霊夢の凄さは半端なかったが、それよりも酒がなくなって暴れ始めた魔理沙もある意味凄いと言える。
「うおーれいむさけがないぞー!」
「あるわけないでしょ! 今のがうちにある最後のお酒よ」
「うがー」
 聞いて一層暴れ始めた魔理沙をよそに霊夢はため息をつく。
「それじゃ寝るわよ……おやすみ」
 立ち上がる霊夢の後ろから悪魔の声が聞こえる。
「あーなくなったんなら……あげたれいむからもらえばいいんだ」
 言葉に反応した霊夢が魔理沙の方を反射的に向いたその時。
 魔理沙が霊夢の口にキスをした。
「!?」
「んっ……ちゅ、ちゅ~んっん~」
 酔っ払って理性の飛んでいる魔理沙に手加減は無く、遠慮なく霊夢の口の中に舌を入れる。
「んっ!! んーーーー!?」
 魔理沙の奇抜な行動に不意打ちを食らった霊夢は魔理沙を振りほどく事が出来ず。
「んっはっんっんん~ちゅっ、んーはっんん~」
 魔理沙によって一方的に搾取される。
 一通り霊夢の口腔内の酒を堪能してから魔理沙は霊夢から離れた。
「ういーおいしかったぜれいむー」
 あいかわらずとろんとした目でろれつの回らない声で喋る魔理沙。
「…………」
 無言のまま呆然とする霊夢。
「……魔理沙のばか」
「ん~?」
 とろんとした魔理沙を後ろに押し倒す。
「魔理沙が一方的なんて……ずるい」
 今度は霊夢から口を近づけて、再び二人はキスをした。

                 † † † † †

「なぁ霊夢?」
 箒で庭の掃除をしている霊夢は呼びかけに応えない。
「なぁ霊夢?」
 再び同じ質問を繰り返す魔理沙。
 しかし霊夢は掃除に夢中だ。
「……朝起きたら頭が痛くて、喉が痛くてあげく服が肌蹴てたんだが……昨日私さ何かしたか?」
 そこで霊夢は魔理沙と目を合わせる。
「なぁ霊夢~?」
「えぇ……何かしたけど、」
 霊夢はにっこり笑顔でこう続けた。
「私の方がもっと色々したから別にいいわよ」
 こうしてこの日の幻想郷の一日は始まった。


 了


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