とある雨の日の博麗神社


「雨だな……」
 神社の縁側でお茶を啜りながら魔理沙は言った。
「雨ね」
 その問いかけに反応したのは魔理沙の隣に座っている霊夢だった。
 最近は梅雨でもないのに雨が降り続けている。
「まぁキノコが育ちやすいといえば育ちやすいんだが……」
 ため息を一つついてお茶を啜る。
 雨が降るのは問題ではない。
 むしろ降ってもらわなくては農作物が育たないからだ。
 だが三日三晩どころか五日五晩ぐらい降っていては、魔理沙もうんざりだった。
 すると雨を見ていた霊夢がお茶を啜る手を止めて言った。
「私としては、あなたがそろそろ出て行ってくれないと食べ物が底を尽いてしまうわ」
 魔理沙が雨宿りに来て今日で五日目。
 一人分の食料で備蓄していたので、二人分ではもう足りなくなり始める頃だった。
「さすがの私もタダで寝食をするのも心が痛むぜ」
 魔理沙は立ち上がると廊下を歩き始める。
 廊下を歩いて着いた先はお賽銭箱の前。
 服の中からお金を出すとお賽銭箱の中へ入れる。
 再び霊夢のいる場所へ。
「これで後二日位泊まっても……」
 霊夢はお茶を飲む手を止めて魔理沙のほうを見ると
「魔理沙。あれだけじゃ泊まった分の一日にも満てて無いわ」
 そう言って魔理沙から視線を外すと、お茶と一緒に用意してあった煎餅を食べ始める。
 魔理沙は驚愕した。
 この場所から賽銭箱までは相当な距離がある。
 だが霊夢は自分が入れた賽銭がいくらかが分かったのだ。
「当てずっぽうは良くないぜ?」
 霊夢は魔理沙の分の湯のみと自分の湯のみ、それと煎餅を持って立ち上がる。
 そのまま台所の方へ向かっていく。
 途中で霊夢の足が止まり。
「――――」
 と小声で言って奥へと入っていった。
「…………」
 その小声を聞き取った魔理沙は、ただただ驚く事しか出来なかった。

                 † † † † †

 どれだけの日数が経ったのだろう。
 雨が降り続けて、魔理沙が博麗神社に泊まり続けて。
 止まない雨は魔理沙の滞在を意味している。
 更にそこから導き出される状況は…。


 博麗神社の室内。
 ちゃぶ台と座布団二枚と人が二人いた。
 二人とも座布団の上に座ってはいるのだが、ちゃぶ台の上に突っ伏したままピクリとも動かない。
 外の雨の音だけがやけに響いていた。
「……今日で、何日目、……だっけ?」
 大き目の赤いリボンをつけた黒髪の少女――博麗霊夢が発した声だった。
 枯れ果てた声はもう力が出ないことを明確に示していた。
「……雨……か……?」
 同じく枯れ果てた声を返すのは、ぼさぼさの金髪の髪と彼女の持ち物である黒い帽子から分かる――霧雨魔理沙だ。
 霊夢は力なく首をゆっくりと振る。
「……食料、なく、なって、から……」
 言葉の最後の方は消え入りそうな程に弱弱しい。
 首だけをゆっくり横にして、視界に霊夢の姿を入れた魔理沙は穏やかな笑みを浮かべていた。
「……三……日……かな」
 それが彼女達の最後の会話になった。
 否。
 どちらとも無く、勢いよくちゃぶ台の上に突っ伏していた顔を上げる。
 互いが互いを睨みつけている。
「そもそも、あなたが雨宿りし続けてるのが悪いのよ!」
 第一声は霊夢。
 霊夢の口調は先程とはうって変わって強い意志が含まれていた。
「それは言いがかりってもんだぜ! 霊夢が雨宿りしていけば良いじゃないって言ったんだろ!!」
 魔理沙も今もてる力を振り絞って声を出す。
「だからって二日位ならまだしもずーーっとよずーーーーっと! 今日で何日目だと思ってるのよ!」
「正確に答えてやるぜ霊夢……十日目だぜ!!」
「常識で考えてそんなに泊まり続ける人はいないわよ!!」
「霊夢が常識とか言い始めるとは思わなかったな!」
「魔理沙より持ってるわよ! それに……」
 そこで霊夢は一拍置いてその言葉を言い放つ。
「何で魔理沙は箒で帰らないのよ! まさかこの期に及んで雨に濡れるのがいやだからとか言わないわよね?」
 語尾に怒気を含みながら言い切る。
「あーーーーそれは……一番痛いところを」
 視線を霊夢から外して言い淀む魔理沙。
 だが意を決して二の句を繋げた。
「……箒が壊れたんだ」
 魔理沙がその言葉を告げた時、霊夢の顔から疲れだけが出てきた。
 何故霊夢が言い返さないのか。
 単純明快な事で、博麗神社から霧雨宅は空を飛べるなら遠い距離ではないが、地上を歩いて行くにはかなり遠い。
 それに霧雨宅に帰るには魔法の森を通る事になる。
 相当な労力を必要とすることは霊夢もすぐに考えついたからだ。
 霊夢も鬼ではない。
 現在、体力気力共に衰弱状態の人間を雨が降る外に投げ出すのは気がひける。
「手入れをきちんとしていなかった私が悪いんだ……」
 魔理沙も悪いという気持ちが強いのかどんどん元気をなくしていく。
 沈黙が再び場を支配する。
 ゆっくりと霊夢と魔理沙はちゃぶ台から床に転がる。
「壊れたものは仕方ないわ……私もイライラしてたから」
「霊夢……」
 それっきり会話は無くなってしまった。
 会話が無くなったというより会話をする元気がもう無いのだ。
 食わず三日目はもうかなりの体力を消耗している。
 意識を繋いでいる二人の気力は凄まじいものといえるだろう。
 場を支配するのは雨の音だけ。
 十日も聞き続ければもう飽き飽きする。
 その時。
 雨の音が一瞬止んだ気がした。
 しかし耳を澄ましても雨の音しか聞き取れない。
 そしてだんだんと意識が朦朧とし始めた。
(あぁもう私達このまま干からびるのね……)
 霊夢の脳裏にこの言葉が浮かんだ。


 雨を傘で避けながら空を飛び続ける一人の少女がいた。
 左手には少女が持つには多すぎる量の荷物を持って空を飛んでいる。
 少女は目的地が見えると徐々に速度を落とし、ゆっくりと地面に降り立つ。
 目の前にあるのは赤い鳥居。
 地面の砂利は降り続ける雨の影響で水分を含んでいた。
 一歩、一歩、歩くごとに服に泥が跳ねるような気がしてならない。
 それが杞憂である事を望みながら、少女は鳥居をくぐり本殿へと向かった。
 傘を閉じて本殿に入るとやけに静かな気配に眉を顰める。
「霊夢? ……いないのかしら?」
 廊下を奥へ奥へ進みながら少女は考える。
 いないとなると用事が済まなくなってしまう。
 それは困るなと思いつつ歩いていると、普段霊夢が居る場所に着いた。
「霊夢いる? あら」
 その時、少女が見たものは…。
 うつ伏せに倒れる二人の姿だった。


 朦朧とした意識の中、霊夢は人影をみた。
 その人影はメイド服にヘッドドレスに銀髪という様相――十六夜咲夜だった。
「あーーうーーさーーくーーや?」
 あまりの空腹に言語野までおかしくなったようだ。
 しかしそんな瑣末な事は置いて、霊夢は一点を凝視する。
 咲夜がビクッと反応し霊夢の凝視するものを持ち上げる。
「今夜泊めてもらおうと思って……鍋の具材を持って来たのだけど……?」
 その言葉は霊夢を覚醒させるのに十分だった。
 上体を一息で起こし咲夜に抱きつく。
「霊夢!? ちょっとどうしたの!?」
 突然の霊夢の反応に動揺する咲夜。
「あーーさくやーーすきーー!!」
 抱きつく手が少し力を増す。霊夢の今持つ精一杯の体力を喜びに使うために。
「えっと……分かったから少し落ち着いて? ほら、よしよし」
 霊夢の頭を優しく撫でる咲夜の顔は優しさに溢れていた。
 嬉しさのあまり涙まで流している霊夢。
「よっぽど辛かったのね……」
「うん。うん!」
 もはや母親に甘える子供のような霊夢をあやし続ける咲夜。
 どれだけの時間そうしていたか分からないが、霊夢が落ち着いたのを確認してから咲夜は霊夢に尋ねる。
「ねぇ霊夢」
「なぁに咲夜?」
 上目遣いの視線がやたらとかわいさを出していたが実はそれどころじゃなかった。
「あそこでピクリともしないのは……魔理沙でいいのよね?」
「あ」
 霊夢が咲夜から離れて魔理沙へ体を向ける。
 そこにいたのは……物言わぬ魔理沙だった。

                 † † † † †

 博麗神社の居間では夕餉の匂いがしていた。
 ちゃぶ台の上にはぐつぐつと煮えた鍋と三人分の食器があり、ちゃぶ台を挟む形で魔理沙と咲夜が座っていた。
「一体何日ぶりの飯だろうか」
 煮えた鍋を狂気の瞳で見る魔理沙の顔はなんとも形容しがたかった。
 普段の彼女を知っている人ならば誰? と言ってもおかしくないほどに。
「後は霊夢がお茶を持ってくるだけだから頑張って」
 今にも飛びつきそうな魔理沙をなだめる咲夜は何故か手馴れているようにも見える。
 それが気になった魔理沙は待っている間の話の種に話題を振ってみた。
「咲夜はどうして、」
「美鈴とかで」
 言葉を遮って咲夜が明瞭に言い切る。
 それでも笑顔で咲夜は言う。
「美鈴と同じ対応はしないから大丈夫よ」
 前の霊夢の時と同じ位の戦慄を魔理沙は覚えた。
 若干震えている魔理沙を満足そうに咲夜が見ていると奥の台所から霊夢がお茶と急須を持って居間に入ってきた。
「お待たせ。さぁご飯にしましょ……魔理沙震えてどうしたの?」
「きっと久しぶりのご飯で喜んでるのよ」
 こくこく頷く魔理沙に疑問が湧く霊夢だったが、確かに久しぶりのご飯では無理もないと納得してしまうのだった。
 席に着き、お茶を入れて三人に配った霊夢が挨拶をする。
「それでは咲夜に感謝して……いただきます」
「「いただきます」」
 さっそく鍋を器に取り分けて口に運ぶ。
「おいしいっ」
「おいしいぜっ」
 霊夢と魔理沙が至福の表情を浮かべていた。
 眼の端にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「よっぽど切羽詰ってたのね……」
 箸をすすめながら咲夜は二人に言う。
「さすがに三日も食わないとこうなってもおかしくないぜ?」
「気が触れなかっただけましだと思ってほしいわね」
 中々早い手つきで箸をすすめる二人。
「そんなに急いで食べると喉に詰まらせるわよ?」
 早い手つき所かハイスペースで食べている二人に言った直後。
「「うっ!?」」
 二人とも一緒になって喉を詰まらせるのだった。


 どたばたとした食事が終わり霊夢と咲夜が食器を台所で洗っている間、魔理沙は居間でぼーっとしていた。
 ちゃぶ台の上に置いてあるお茶を手に取り口に運ぶ。
 台所の食器の音とお茶を啜る音だけが居間を支配した時。
 魔理沙の対面の空間が裂けた。
「おっ?」
 裂けた空間の向こうからゆっくりと顔が出てくる。
 そこから出てきたのは紐のリボンが付いている帽子に金髪で全体的に紫の服を纏った女性――八雲紫だ。
 手には白くて大きなものが抱えられていた。
「こんばんは魔理沙。元気にしてた?」
「数時間前まで瀕死だったけど今は元気だぜ」
 紫はその答えに満足すると台所の方を見る。
 台所では霊夢と咲夜が談笑しながら食器を洗っているのが見える。
 再び魔理沙を見て紫は手に持っていたものを畳の上に置く。
 置かれたものを良く見ると布団と枕という寝具一式だった。
「博麗神社には寝具は二つしかなかったと思って。用意しておいたわ」
 博麗神社には元々霊夢一人分の布団しかない。
 いつの頃からか魔理沙が自分の分を持ってきてからは二人分になったのだった。
「確かにそうだが……紫いつから覗いてた?」
「一週間前ぐらいからずっと」
 無言で八卦炉を紫に向ける魔理沙。
「……さすがに危なくなったらどうにかしようとは思ったわよ?」
「どう考えても危なかっただろ!!」
 激昂する魔理沙。
 無理もない。
 しかし、まだ体が全部こちらに出ていない紫は戸惑わず答える。
「だって簡単にどうにかしたら今後も頼られちゃうでしょ? それに今日どうにかしようと思ったらあの子が来て解決しちゃったんだから」
 若干不貞腐れているようにも見えなくない紫の表情を見た魔理沙は、出した時と同じように無言で八卦炉を服の中へしまう。
「今日は三人で楽しんでね」
 そう言い残すと紫は空間の隙間へ戻ってしまった。
 ゆっくりと閉まる隙間。
 隙間が閉まる様を見届けると台所から霊夢と咲夜が戻ってきた。
 霊夢が畳に置いてある寝具を見て一言。
「紫なんだって?」
「霊夢……気づいていたのか」
 首を縦に振ってゆっくりと座布団に座る。
「魔理沙には悪いけど、助けてと言うつもりもなかったから放置してたんだけど」
 聞いて頭をかきながら魔理沙は一言で返した。
「……紫も大変だな」
 どうして紫なのよと言う霊夢の言葉を聞き流しつつ、魔理沙は隙間があった場所を見つめていた。


 外の雨音がだんだん激しくなってきた。
 三人は紫が持ってきてくれた布団を使い、川の字で寝始める。
「じゃあおやすみ」
 魔理沙の一言で皆寝る事にした。
 が。
 障子の向こうが光った刹那、ガラガラガッシャーン!! という爆音がした。
「うわぁ!?」
 魔理沙の叫び声が、眠り始めていた霊夢と咲夜を起こした。
「たかが雷でしょ? いちいち叫び声を……」
 霊夢の言葉が途切れたのが気になり咲夜が振り返ると。
 視線の先にあったのは、掛け布団を上からかぶり若干震えている魔理沙だった。
「魔理沙あなた……」
 咲夜の呼びかけに応えるように布団から魔理沙が顔を出した。
「わ、わたしは……雷が、あまり好きじゃ、ないんだぜ……」
 震えている声を聞く限りではあまりどころか、かなりだと思うのだが……。
 再び閃光と共に爆音が鳴る。
 今度の爆音はより博麗神社に近いようだった。
 魔理沙が布団をかぶり、霊夢がため息をつく。
「山の上の方だから落ちるかもね」
 叫び声が二倍増しになった。
「霊夢……遊びすぎよ」
 いじり始める霊夢を抑え、咲夜はある提案をした。
「まぁこのままじゃ寝られないし……少しおしゃべりしない?」
「ん~私は眠いんだけど」
「さ、咲夜に賛成だぜ……。霊夢……雷がやむまでで……いいんだ」
 あまり乗り気でない霊夢に懇願する魔理沙。
「……いいけど。じゃあ何を話すの?」
「……」
 早くも黙り始める魔理沙。
 寝始める霊夢。
「まて! 待つんだ霊夢!!」
 魔理沙の叫びが場に切なさを生む。
「じゃあ……逆手に取って嫌いな雷の話とかどう?」
 怯えた眼つきで咲夜を見る魔理沙。
「それぞれの雷の思い出とかね……それなら私あるわよ」
 霊夢の一言から話が始まる。

 今日のような雨が降って雷が鳴っていた日だったわ。
 お茶を啜っていたら、急に夜雀が雨宿りに来たのよ。
 その夜雀は雨に打たれて震えていたから、仕方がなく拭くものを貸そうとして取りに行ったの。
 取りに行って戻ってみると、辺りには羽が散乱していて夜雀の姿はなかったわ。
 何をしに来たのか今でも分からないのよ……。
 あの後、掃除するのが大変だったのを覚えているわね。

 霊夢が一通り話し終え二人の方を見る。
 魔理沙は俯き、咲夜は顔を背けていた。
「どうしたの?」
「いや……なんとなく夜雀の事を考えていただけだぜ」
「えぇ……」
 首を傾げるのは霊夢ただ一人だった。
「まぁ……気を取り直して私の話をするぜ」
 そして魔理沙は語り始めた。

 そもそも私が雷を怖がるようになったのは、小さい時にあった事が原因なんだ。
 やっぱり今日のように雨が続いた日だった。
 家に居続ける鬱憤から逃れたくて、つい傘を差して外に出てしまったんだ。
 久しぶりの外は凄く雨の匂いが強かった。
 はしゃぐだけはしゃいだ私は、疲れて家に帰ることにした。
 その時に強風が吹いて私の手から傘が飛んでいってしまった。
 びしょびしょになりながら空を飛ぶ傘を追った直後。
 その傘目掛けて雷が落ちたんだ。
 閃光と物凄い音に眼と耳がおかしくなったのを覚えてる。
 その余波が終わってから私は恐怖から走って家に帰った…。
 今でも雷がなってるとあの閃光と音を思い出してしまうんだ……。

「確かにそんな出来事があっては怖いかも知れないわね」
 霊夢は先程と違って魔理沙をからかう事はしなかった。
「目の前に落ちるって……凄いわ」
 顎に手をつけて神妙に頷く咲夜。
「まぁ所謂トラウマってやつだな」
 魔理沙も自分以外の人に話して少し楽になったようだった。
「じゃあ今度は私の話ですね」
 お母さんが子供に話して聞かすように、人差し指を立てて咲夜は話し始めた。

 雷って見たり聞いたりすると体が勝手に反応しない?
 私達人間がそうであるように、吸血鬼――お嬢様達も反応してしまうんですよ。
 ただお嬢様達の反応の仕方は、満月の夜みたいに理性より本能が先立つみたいで……。
 レミリアお嬢様は全然表に出さないのですが、フランドール様は少々やんちゃ度が上がってしまうんです。
 いつもは私とメイド妖精部隊が遊び相手になっていて、パチュリー様とレミリアお嬢様は我関せず……なので。
 今日は誰が遊び相手になっているんでしょうかね?

 魔理沙はこの部屋じゃないどこか遠くを見ながら言った。
「今誰かが咲夜の名前を呼んでいる気がしたぜ……」
「……帰らなくて大丈夫なの?」
 霊夢の問いに咲夜は笑顔で答える。
「久しぶりの休暇ですので」
 咲夜はその一言で自分の話を終わらせた。

 三人で談笑したかいがあってか、いつの間にか雷鳴が聞こえる事は無くなっていた。
 徐々に小さくなっていく雨音を聞きながら三人は眠りについた。

                 † † † † †

「ん……」
 霊夢は自分の顔に当たる日差しの眩しさで眼が覚めた。
 布団からゆっくりと起きて障子の方へ向かう。
 開けた障子の向こうは、先程止んだと思われる程に濡れた地面と雨の匂い。
 そして…実に一週間以上ぶりの太陽が澄み切った蒼空に輝いていた。
 障子を開け放ち、部屋に朝の日差しと外の空気を入れる。
 部屋の中を振り返ってまだ寝ている二人の姿を確認する霊夢。
「……でもまぁ」
 この一週間以上の事を振り返る。  本当に色々とあった。
 危うく餓死しそうにもなった。
 ――それでも。
「時々はこういうのも良いのかもね」
 日差しと外からの空気に気づき眼を覚まそうとしている魔理沙と咲夜を見ながら。
 そう、霊夢は呟いた。


 了


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