光、想い馳せ
今日は村のお祭り。
霊夢や魔理沙に誘われて博麗神社で開かれた宴会に妖夢と共に来ていた幽々子は、村の方から天へ向かって空高く飛ぶ一筋の光を見た。
光は速度を落として宙で一回止まると、鮮やかな光を散らして輝いた。
その後も続々と光が空へ昇っては輝き、消えていく。
祭りの最後を飾る花火。
博麗神社から見る、祭りの最後の花火はとても美しかった。
そんな光の輝きに誘われるように、いくつかの人魂が空を昇って行くのを幽々子は見た。
瞬間。
今見ている景色とは別の景色が、幽々子の視界を遮っていった。
それは遠い昔にも見たような景色のようで。
景色が過ぎ去った後に見た花火の輝きが、生命の儚さを表しているようで。
幽々子はいつのまにか涙を流していた。
それを見ていた妖夢は主人の傍らにそっと身を近づけた。
「幽々子様」
涙を拭いもせずに幽々子は自分の従者である妖夢を見る。
「幽々子様どうかなされましたか?」
つとめて優しく尋ねる妖夢。
その彼女の優しさを感じながら、幽々子は今感じていた事を妖夢に話した。
「あの花火の光を見ていたら、懐かしい景色を感じたの。それと同時に……生命の儚さにもあの光は似ていて。そんな風に考えてたら自然と涙が出てしまって」
「その景色というのは……幽々子様の?」
「いえ……先ほど通りかかった人魂の記憶でしょう」
幽々子は花火の光に誘われていく人魂を目で追った。
微笑を口元に作りながら、妖夢は彼女に答えた。
「やっぱり幽々子様の従者で良かったと私は思います」
「妖夢?」
突然の妖夢の言葉に戸惑いを見せる幽々子。
しかし妖夢は気にせずに先を進めた。
「そのような事を想って涙を流す幽々子様だからこそ冥界の主が務まっていると思いますし、彼らも幸せでしょう」
そう言って、幽々子が目で追った人魂を見る妖夢。
「死んだ者達の事を想えず、ただ事務的に彼らを導いても彼らに失礼です。彼らが生きた証を思える幽々子様……」
一息を入れて言う。
「そんな幽々子様だからこそ私は傍にいたいのです」
沈黙。
じっと妖夢の顔を見つめる幽々子。
自分自身が言った事が急に恥かしくなってきた妖夢はあわてて照れていた。
照れてわたわたしている妖夢の顔は凄くかわいいと幽々子は思った。
いつまでも見つめていると妖夢が困るようなので幽々子は視線を空へ移した。
宙を浮いている人魂に。
今だ花火の光に誘われてゆらゆらと揺れている人魂に幽々子は尋ねる。
「まだ……花火を見ていたいのよね?」
人魂は幽々子の言葉に答えるように体を上下に揺らした。
「そう。なら……あなたの生前の記憶と共に私もあの光を眺めましょう」
夜空に一際大きい、大輪の華が咲いた。
了
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